- カトリックの教え
天と地をつなぐ-聖ホセマリアが教えた信仰-
あまり知られていませんが、聖ホセマリアは司祭になってからマドリッド大学の法学部で博士課程の勉強をしていました。日本で言えば東大にあたります。そんな時に神から特別な光を受けてオプス・デイを「見ました」。1928年10月2日でした。彼の周囲には優秀な学生がたくさんいて、友情を築いていました。彼らはスペインの未来を担う人々でした。彼らが創立者と共にオプス・デイを創っていくことになるのです。オプス・デイは社会人として信仰を深める道だったからです。聖ホセマリアの祈りのカードに「日々の務めを果たしつつ聖性を求める道」とあります。つまり日常生活と仕事をよく果たし、「すべての人々に喜びと真心を込めて仕える」ことで、神を愛することが出来るのです。このように、よい社会を創りあげる仕事が神への捧げものになり、もう一つの祈りになるのです。聖職者や修道者だけが神への道ではありません。結婚生活、社会生活も聖なるものに高めることが出来るし、高めなければなりません。
現代人は神を心から追い出し、現代社会は神を世界から追い出してしまいました。無神論の価値観が政治・経済・文化を支配しています。しかし人類の長い歴史を振り返れば、人間は常に神と共に生きてきました。今の状況は人類始まって以来、初めての現象です。「人間は神なくして幸せになれません」(アウグスティヌス『告白録』1参照)。人々の心に神を取り戻すため、社会の中に神を取り戻すため、オプス・デイは生まれました。しかし仕事は物的で信仰は霊的です。仕事と信仰は天と地が交わらないように、どこまでも平行線のままに見えます。この二つが交わるのは、体と霊魂で出来た私たち自身の中なのです。そして、私たちの中で「天と地を一つに」しなければなりません。それが人間の使命なのです。
誰もが神からの使命を受けて生まれてきます。その使命を責任を持って果すなら、つまり人々に仕え正義にかなった社会を築くなら、その仕事は神に捧げる仕事に変わります。お金や権力のため仕事は、自己愛で汚染されて聖なる仕事になれません。物的な仕事を神への祈りに変えるのは私たちの心のあり方です。いつも笑顔で、真心を込めて、どんな状況でも感謝の念を持って、奉仕の心で働くなら、それはもう一つの祈りです。「一時間の勉強は一時間の祈りになる」(『道』335参照)のです。現実離れした信仰でもなく、無神論的で欲望に執着した仕事でもなく、神を愛する心で働き生活する人生、天と地をつなぐ生き方を身につけましょう。■
*2022/09/30 創立記念ミサ説教(文責:小寺神父)