- カトリックの教え
令和4年度2月モットー『剛毅』
樋口季一郎。ユダヤ人は、この名前を「大恩人」として心に刻んでいます。命のビザを発給して6000人のユダヤ人を救った杉原千畝が有名ですが、樋口の名は知られていません。1943年、ナチスの迫害を逃れてシベリア鉄道で満州の国境まで辿り着いたユダヤ人が多くいました。ところが、国境で止め置かれて満洲国を通過できません。日独伊同盟を結んでいたからです。陸軍中将だった樋口は現地で決心します。許可が下りる可能性は低い上、返事を待つ間に凍死する人が続出することが目に見えていました。決断を迫られ、自分の信念に従い、解任されることを覚悟して独断で許可を出しました。当然、外交ルートでドイツから猛抗議され、責任者だった東条英機から問いただされました。そこで、「これは人道上の問題であり、ドイツから批判される所以はない」と、言い分を正々堂々と述べました。東条英機も了解して、ドイツの抗議を一蹴しました。 こうして二万人ものユダヤ人の命が助けられたのです。
もう一つ。1942年3月、第二次世界大戦中、沈没した英国軍艦の敵兵422名を海から救助した工藤俊作艦長の話です。さっきまで命を懸けて戦っていた相手でしたが、海を漂う敵兵は敵ではなく「ただの人」です。艦長は、それを見殺しにするか、良心に従って救助するか、決断を迫られました。そして、国の法律より人道上の要求を優先させる判断をするのです(『敵兵を救助せよ!』恵隆之介著、草思社を参照)。「義を見てなさざるは勇なきなり」です。