• カトリックの教え

WBCに見る「神が宿る」働き方ー仕事の成果ー

 決勝戦9回表ツーアウト、日米のスーパースターが直接対決する場面が訪れました。ツーストライク、スリーボールから投じられた運命の一球、外角に逃げる高速スライダー。トラウトのバットが空を切る、日本の優勝が決定した瞬間です。このマンガのような展開に「野球の神様がいる」と感じた人も多いでしょう。そうです。神様は本当にいます。野球だけでなく「人生の神様」です。私たちの生活や仕事に寄り添っています。私たちの心を通して私たちが想像する以上の業、つまり「神業」を実現されます。そして、この奇跡のような試合を創り上げた土台は、選手一人一人の仕事に懸ける心の在り方でした。

 まず、我を捨ててチームに尽くす、仕える心です。普段は4番を任されるバッターが、代打のために黙々と素振りをして出番を待つ姿、エース投手がリリーフ登板のためにブルペンで投げ込んで準備する姿、そんなプライドを捨てた姿が逆に最高に格好よく見えました。また、ホームランが期待される場面で、意表を衝くバントをした大谷選手に世界中が驚きました。自分が称賛されるより確実に一点を取りに行くひたむきな姿に、勝利への信念を見ました。

 また、信頼して任せる姿を見ました。不振が続く村上選手を監督も選手も信じ続けました。それを言葉や態度でしっかり伝えていました。それだけの実力がある選手ですが、重圧のかかる状況で最後は大きな働きをしました。監督の思いが通じ、花開きました。「念ずれば花開く」、信じる続けることで力を引き出すことが出来ました。ヌートバー選手が言う「チームは家族であり兄弟」という信頼関係で、負担を背負い合う覚悟がありました。自己責任だけ強調され数字だけで評価されると持てる力を発揮できないこともあるでしょう。

 さらに「誰のために野球するか」がはっきり見えました。最年長のダルビッシュは気負わず「野球選手である前に、一人の夫、父親であることが大切」と語りました。自分が活躍して注目されたいという虚栄心を捨て、日本の野球界の発展に貢献したい、後輩を育てることで恩返しをしたい、そんな思いが詰まった言葉です。フランシスコ教皇は来日した時に「人生、何をするかより、誰のために生きるかが大切」と青年の集いで語りました。全選手が個人的な名声より、野球を盛り上げたい、日本を盛り上げたいという熱意を持って臨んでいました。このように、我を忘れた大きな心で人に尽くす時、仕える時、そこに神が宿ります。この精神で新たな年度を始めましょう。■*2023/03/24文責:小寺神父