• カトリックの教え

令和4年7月『友情』

「大人になってから絵本を読む」これは何となく不思議なフレーズに聞こえますが、意外と多くの方が経験していることではないかと思っています。

『星の王子さま』という有名な本について知ってはいましたが、大人になるまで読んだことがありませんでした。

小飛行機が故障して砂漠に不時着して困っている操縦士の元に見知らぬ少年が現れ、不思議な数日間を過ごす物語です。当然のようにまったくシンプルな話なのですが、あまりにも想像を超えた展開をしていくので、いつの間にかその世界に引き込まれてしまい、人生の真理を言い表す言葉の数々にハッとさせられることが沢山あります。

ある場面で少年はキツネに出会って仲良くなりたいと思うのですがキツネはつれなく言います。「オイラは、キミとは一緒に遊べないよ。そもそもオイラ、キミに飼い馴らされちゃいないからね。」

飼い馴らす、あまりいい響きではないですが少年が何度も問い直しているうちにキツネは説明してくれます。「もう誰もが忘れてしまったことだけど、絆をつくるってことだよ。」私たちは時間をかけてじっくりと関係を築いていくことを忘れて、何かパッとすぐに手に入ることだけに気を奪われてしまっているかもしれません。物語の中で少年が自分の星でバラの花のお世話をするとき、水をあげたり、寒くならないようにガラスの覆いをしてあげたり、ついたてで風から守ってあげたり、毛虫を追い払ってあげたりして、そのおかげで彼の一本のバラは特別な「僕のバラ」になりました。

「本当に大切なことは目に見えない。」「バラのために失くしたキミの時間が、キミのバラをかけがえのないものにしたんだよ。」本当に大切な友情のために、喜んで自分の時間を失うことができるようになりたいものです。