• カトリックの教え

令和6年度10月モットー『誠実』

最近、近所が慌ただしい。

家の新築や外壁塗装などの工事で軽トラックや様々な職人さんの出入りがあるからだ。更地だった土地の着工から完成までの変化を横目で見ながら、職人さんの働きぶりに感心してしまう。


さて、職人さんの仕事ぶりについて、民俗学者の宮本常一が記している。

石垣を積む職人は「渡り」といって旅の職人が多かったようだ。そんな「渡り」の石工たちが作業している場で聞いた次のような話がある。

「田舎を歩いていて何でもない田んぼの岸なんかに、見事な石の積み方をしてあるのを見るんじゃが、心を打たれることがある。こんな辺鄙なところに石垣を築いた石工たちは、どんなつもりでこんなに心を込めた仕事をしたんじゃろう。村の人以外には誰も気に留める人もおらんのに。どうしてこんなに心が込められるんじゃろう」と。

「この仕事をやっているとなぁ、やっぱりいい仕事がしたくなる。そしてそのことだけを考える。仕事が終われば、もうそれっきり、その土地とは縁も切れてしまう。が、いい仕事をしておくと楽しい。そうするとよ、後から来たものがほかの家の田の石垣を築く時、やっぱり粗末なことはできんもんよ。」

さらに宮本は続ける。「だれに命令せられるのでもなく、自らが自らに命令することのできる尊さを、この人たちは自分の仕事を通して学びとっているようである」。

今月のモットーは「誠実」。私利私欲を交えず、真心をもって人や物事に対することの意味だが、行動に移すことは非常に難しい。しかし、物事を進めるにあたり、私たちは未来(自分自身の性格や生き方)を積み上げていると思う。だからこそ、石工のように誠実に自分のやっていることに向き合いより良い未来のために準備していきたいものである。