- カトリックの教え
令和5年度4月モットー『礼儀』
聖書を読んでいると時々「あれっ、そういえばこれ面白いな。」と興味を引かれる場面に出会うことがあります。
たとえばどんどん有名になっていくイエスに対して同じ村の近所の人々から「あれは大工の息子じゃないか」と言われる場面(マタイの福音書13章)がそうです。
イエスは旅の最中に様々な人と出会っていき多くの人の心に残るようなエピソードをたくさん残していきます。彼のそんな素晴らしい噂が広く知れ渡っていく中で、当時イエスの住んでいた近所の村人の呟いた言葉はなかなか意味深長です。そこには少しイエスを揶揄するニュアンスが含まれています。わしらの村の大工の息子のくせに偉そうに…と思っているわけです。でもその父親を指すのに“あの腕の悪い大工”とか“あの分からず屋の大工”という否定的表現はつきません。それはイエスの父親が村では信頼に足る腕の良いきちんとした大工だったからだと想像することができます。“わしらの村の立派な大工”として認知されていたので父親を貶めるような言葉は村人の頭には浮かばなかったのでしょう。気さくで人当たりの良い大工の父親、きっと息子であるイエスも似た部分があったのでしょう。多くの人がイエスに好意を抱いたからです。
今月のモットーは礼儀です。礼儀は何も堅苦しさを意味するわけではありません。人から悪く思われないように防御として礼を失さないようにヨソヨソしく控えめにすることではないのです。イエスの父親のように気さくで人当たりの良さの中に見られる思い遣りや優しさ何気ない小さな言葉遣いなどに現れる信頼の源となる態度が礼儀の意味するところでしょう。新しい年度をスタートするにあたってイエスの父親のような礼儀正しさを実践したいものです。聖書の記述に深い背景を読み取るのは面白いものです。