• カトリックの教え

令和3年度11月『秩序』

 スペインの北部にログローニョという人口15万の街があります。ワインで有名なラ・リオハ州にある自然の豊かに残るヨーロッパの伝統的な小さな街です。

 私は隣町のパンプローナというところで司祭になる勉強をしていたので、度々遠足で訪れたことがあります。その折、街路のある建物に「ここで聖ホセマリアが生活をしていた」という金属のプレートがはってあるのを見たことがあります。彼は高校時代をこの町で過ごしたのです。

 その高校でのある忘れられない思い出を後に聖ホセマリアは語っていました。それは厳格で知られる化学の先生に関する出来事でした。彼は別の高校から赴任してきて2年目だったのですが、化学の実験室がひどい状態だったことに驚きます。道具は散乱、埃に覆われている器具もたくさんありました。綺麗な整った状態にするには大変な時間と労力がかかることは明らかでした。その時、先生は次のような決断をして生徒に伝えました。「見ての通りこの実験室はひどい。でも授業を潰して整理するのは時間がもったいない。通常通り授業をして実験もしていきます。そして毎回使ったものを綺麗にしてきちんとあるべき場所にしまっていきましょう。」こうして数回の授業の後には実験室はとても整理されて清潔になっていきました。

 聖ホセマリアはこのような些細な出来事の中に隠されている教訓を記憶に残す才能に長けていました。秩序を取り戻すには、何か大きなことをするよりも日々の些細なことをきちんと丁寧にしていくことが大切だということです。こうして私たちの日常は整えられ、時間を無駄にすることもなくなっていくでしょう。